脳腫瘍との戦い

14歳の時、中学三年生の5月に私は脳腫瘍と診断された。
病院の待合室で母に「俺、死ぬの…?」と言いながら泣いていたのを今でも覚えている。
後で聞いた話だが、家族には「短くて1年」と伝えられていたらしい。
当然、余命のことだ。
その年の夏は生きるか死ぬかという、精神的に未熟な私にとっては酷とも言える毎日だった。
外を歩くと、街から見える景色がとても綺麗に見えた。
自分はもうすぐこの世界から去るのかと思うと、何もかもが尊く感じた。
友人たちには本当のことを話せなかった。
話したら、きっとすごく重く受け止めるだろうし、今まで通りの自分として接してほしかったから。
内視鏡手術を受けて、幸い、私の身体にいた腫瘍は致命的なものではないことが判明した。
それが分かった日の夜は、甘いものが好きな母が久々にロールケーキをどか食いしていたのが今でも目に焼き付いている。
沢山心配かけたんだろうな。
手術の時は、食事が喉を通らない母を父が励まして食べさせていたと後で兄から聞いた。
それから抗がん剤治療や放射線治療を受けて、髪の毛が一時的に抜けたりと辛いこともあったけれど、多くの優秀で、優しい方々の支えがあって、病気は無事寛解した。
今から思えば、あの闘病体験が私の人格の一部として今も生きていて、心のどこか、いや私の芯の部分を形作っているように思える。

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